近年、再生医療という言葉を耳にすることが多くなりました。
しかし、具体的にどのようなものか知らないという人も少なくないでしょう。
今回は、医療の分野だけではなく美容の分野においても注目を集めている再生医療とはどのようなものなのか、詳しく説明していきます。
再生医療とはどのようなものか
再生医療は、幹細胞を用いて壊れてしまった細胞の修復を行い、臓器や組織の機能を取り戻すために行われます。
これまでの医療現場における治療では難しかった治療や治療方法が確立されていない病気に対して有効な治療法となる可能性があるため、大きな注目を集めているのです。
その中でも、iPS細胞は様々な細胞に分化できるという多様性を持っていて、無限に増殖できる力も持っていることから、再生医療の可能性をさらに広げてくれるのではないかと期待されています。
近年、日本の平均寿命は大幅に延びています。
しかし、細胞の老化が原因だと考えられる慢性的な疾患も、平均寿命の延びに伴って増えています。
そのような慢性的な疾患は、根治するための治療法が確立されていないものが多く、苦しんでいる人は多くいるのです。
このようなことを踏まえて考えてみると、iPS細胞や幹細胞を活用した再生医薬品の開発や製造が進んでいけば、平均寿命の延びに伴って増えている慢性的な疾患の治療も可能になるのではないかと考えられます。
そして、高齢化社会におけるQOLの向上にも貢献できるようになるでしょう。
再生医療で活用される幹細胞とは?
再生医療では、幹細胞というものを活用します。
幹細胞は、私たちの生活の中において身近なものではないので、どのようなものか分からないという人も多いでしょう。
そこで続いては、幹細胞とはどのようなものなのかということについて説明をしていきます。
私たちが生きていくためのサポートをしてくれる
私たちの体は、およそ37兆個もの細胞によって作られています。
細胞がそれぞれ違う働きをしてくれることによって、私たちが生きていくためのサポートをしてくれているのです。
血液の中にある赤血球は、酸素などを体全体に運んでくれます。
また、神経組織を作るための神経細胞というものもあります。
私たちの体は、このように色々な働きを持っている細胞によって形成されています。
数ある細胞の中でも特別な働きを持つものもある
およそ37兆個もある細胞の中には、特別な働きを持っている細胞もあります。
それが、幹細胞です。
幹細胞は、先ほども説明したように壊れてしまった細胞の修復を行うという役割を持っています。
転んですりむいてしまった時には、皮膚の組織が傷つき、血が出てきます。
そうなると消毒ケアをしたり、絆創膏を貼るなどして、治るのを待つしかありません。
かさぶたができ、自然に剥がれて来るころには、傷口は治って元通りになります。
これは、血液に含まれている血小板によってかさぶたが作られ、幹細胞が持つ働きによって新しい皮膚細胞が生み出されていることによって起こる現象です。
つまり、様々な細胞に変化できる幹細胞が皮膚の細胞に変化し、増殖した結果だということになるのです。
このことから、幹細胞は自然治癒力との関わりも大きいということになり、私たちが生きていくためには必要不可欠なものです。
再生医療で活用される幹細胞は決まっている
再生医療では、脂肪由来の幹細胞と臍帯由来の幹細胞を活用することが多くなっています。
次は、再生医療で活用されることが多いこの2つの幹細胞について説明していきましょう。
脂肪由来の幹細胞について
脂肪由来の幹細胞は、軟骨や脂肪組織、骨、心筋細胞などに変化できる幹細胞です。
色々な細胞に変化できるという特徴をもつ幹細胞なので、再生医療の現場においても応用しやすいということで注目されています。
そのような特徴を持っている脂肪由来の幹細胞は、体性幹細胞に分類されていて、私たちの体の中で常に活動している細胞となっています。
脂肪由来の幹細胞が注目される以前は、骨髄幹細胞が注目を浴びていました。
しかし、骨髄幹細胞は抽出するときに強い痛みを感じてしまうというデメリットがありました。
脂肪由来の幹細胞が注目されるようになったのは、そのようなデメリットを感じることなく抽出ができるからです。
臍帯由来の幹細胞について
臍帯由来の幹細胞は、赤ちゃんとお母さんの体をつないでいるへその緒の組織に含まれている幹細胞です。
造血幹細胞とも呼ばれているこの幹細胞は、赤血球や白血球などに変化するという働きを持っています。
再生医療の現場で臍帯由来の幹細胞を使用すると、血液の病気を治療する時に役立ちます。
それだけではなく、シミやしわを改善するという働きも持っているため、美容の分野においても注目されています。
脂肪由来の幹細胞と臍帯由来の幹細胞は、再生医療の分野において大きな注目を集めています。
ただし、脂肪由来の幹細胞の方が採取しやすく、臍帯由来の幹細胞の方が採取しにくいため、状況によっては脂肪由来の幹細胞しか使用できないという可能性もあります。
つまり、臍帯由来の幹細胞を活用した再生医療は、100%受けられる保証があるというわけではないということを覚えておいた方が良いでしょう。
幹細胞を培養した幹細胞培養上清液を治療で用いる
幹細胞を活用した再生医療では、幹細胞を培養した幹細胞培養上清液を使用します。
幹細胞培養上清液には、培養時に幹細胞から分泌されたサイトカインやコラーゲン、ヒアルロン酸、抗酸化酵素、ビタミンなどが豊富に含まれています。
そのため、美容の分野でも魅力的な効果を発揮してくれることが期待されています。
若返り効果も期待できるため、美容クリニックなどでも幹細胞治療を導入するケースが増えているのはこのためです。
幹細胞培養上清液は、不純物を取り除く遠心分離機を活用したり、フィルターにかけて滅菌処理をしたりしているので、安全性も高くなっています。
また、人間の細胞から抽出された幹細胞のみを活用しているので、副作用の心配もほどんどないと言えるでしょう。
このような安全性に配慮された幹細胞培養上清液を活用した治療によって、アンチエイジング効果や神経細胞を修復する効果、発毛を促進する効果、血管を再生する効果などが期待できます。
これらの効果は、女性にとって嬉しい効果だと言えます。
そのため、美容クリニックにおいても幹細胞治療を導入するケースが増えているということになります。
再生医療は、医療の分野だけではなく、美容の分野においても大きな注目を集めています。